案件は脳まで持っていけ(←自戒を大いに含む)
- 作者: 有川浩
- 出版社/メーカー: メディアワークス
- 発売日: 2006/02
- メディア: 単行本
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はてな内で見て回ると、「賛」意見は男性キャラ萌えや原作ファンの応援で、「否」意見は「世界観がよくわからない」というものが大方を締めている? 自分は原作読者(別冊は購入済み、近日中に読む予定)なためもあり前者ですが、後者のある種の拒否反応的な意見に興味を惹かれています。
「世界観がよくわからない」のひとことで済ませている方が多いのですが、細かい感想を拾っていくと具体的には、
- 「なぜ武力をもってして(命を賭けて)まで、本を奪取または奪還しなければならないのかがわからない」
という点に「否」論者の感想は集約されるようです。ドラマの背景となる世界観の根本的な部分につまづいている形です。偉そうな言い方をすると、以下のような状態かと。
少しだけだが決定的に現実とは違っている世界観。それについてモヤモヤとした違和感を感じるものの、ストーリーの主線がベタなラブコメであるため、違和感は解決されないまま話が進む。あくまで小さな違和感であるため、逆にそこが強調されてしまい、違和感は不快な状態にまで膨らむ。不快感を可能な限り感じないよう、早急に処理するため、脊髄反射的な拒否反応が表出する。
さて、ならばいっそ第一話Aパート全部を贅沢に使い、設定を詳しく述べ立てれば良かったのでしょうか? そうすれば脊髄反射的な拒否反応は出にくかったのでしょうか? そうかもしれません。でもそのかわり、明らかにキャッチーな構成ではなくなります。登場人物と共に追体験をしたわけでもないので、さほど印象には残らない結果となるでしょう。
形式的な説明だけで済むのなら本編ストーリーは最初から要りません。設定の良し悪しはストーリーが終わったあとに判断できれば十分です。なにより1クールは短い。少しでも本編ストーリーに時間を回したいのが、制作者サイドの人情というものではないでしょうか。
とはいえ、アニメ版に不満が無いというのはウソになります。以下に箇条書きします。
- 作品上の現状が良化特務機関と図書館(図書隊)の抗争がエスカレートしていった結果ではなく、最初から「戦争上等!」な状態だったように見えた。(=違和感の助長につながる)
- メディア良化法の説明不足により、同法が雑誌や書籍のみを対象としているように見えた。(=危機感のアピールに大きく欠ける)
- 主人公の郁たちが社会的によって立つ柱となる、通称「図書館の自由法」の影が薄すぎる。(=図書隊の存在が社会的に不安定なものに見えてしまう)
特に最後の「図書館の自由法」については、作中でその元となったとされている「図書館の自由に関する宣言」の知名度の低さから言って、毎回アバンタイトルで読み上げても良いくらいなんだけどなぁ。
あ、もちろんストーリーはベタなラブコメのままでね。