TBSと初音ミクのこと

 先日の日曜に起きた件です。自分はミクをやってませんが、(何年も前の話ですが)出版業界に居たことのある立場から少々書きたいと思います。
 なお、件の番組ですが、問題の発生したコーナーを生で見てはいません。*1なので、月曜日に噂を聞いてニコ動にアップされていた放送映像を見、知りえた経過のみを元に書きます。その点はあしからず。

  1. 初音ミク』の紹介を名目に製作会社と一般ユーザーを取材。
  2. 放送では『ミク』の紹介もそこそこに、取材映像の編集により所謂「オタク」の生態を紹介するコーナーへと仕上げられていた。
  3. 編集され使用された映像は、主に取材者側の要請や誘導があったと思われる箇所ばかりだった。
  4. 当初の企画意図(『初音ミク』の紹介)を変更したことを、取材に協力した『ミク』製作会社と一般ユーザーに伝えないままの放送だった。
  5. 当該映像の最後には職業蔑視ともうけとれる、番組サイドによる発言があった。

 問題のポイントは以上かと思われます。
 「1」は事実説明なので特に言及しません。
 「2」は、コーナーの主題がすり返られたことを示しています。そのため、番組の主役であるはずの和田アキコさんのコメントも『ミク』から逸らされてしまっており、「(所謂『オタク』の)心情が分からない」*2というものになってしまっています。恐らく、『ミク』を知らない一般視聴者の感想も、彼女と同様のものとなっているのではないでしょうか。これが当該コーナーの生み出した「結果」です。
 「3」は「2」という結果が生み出されることとなった理由のひとつです。製作会社側の人間による『ミク』の説明にはTBS側が用意した原稿が使われ、その内容は『ミク』の不完全な「イメージ」を視聴者に与えるものでした。当然ですが、説明の取りこぼしが多く発生して誤解の原因となりえます。また、一般ユーザーに対するインタビューに至っては『ミク』とは無関係な、被取材者個人に関する質問がなされた場面ばかりが放送されました。
 「4」は、TBSが自身の信用を劇的に落としたと個人的に思う点です。企画意図の変更は(通常ならば)それを取材協力者に秘密にする理由がありません。当初の企画意図を前提に取材を承諾した法人と個人がその変更によって正当なものではない不利益をこうむれば、それはTBSに対しても(もしかすると視聴者にとっても)ダメージとなるからです。伝達する時間の有無は一切、それを怠る理由にはなりません。*3今回の件がミスの結果であれ未知の理由による意図的なものであれ、TBSの信用は地に落ちたと見るべきでしょう。
 「5」については、個人的に不審に思っています。この表現が意図的なものでないのならば、番組制作におけるチェック体制の不備でまだ済むでしょう。ですが、当該コーナーの主題のすり替えから視聴者の眼を逸らすために意図的に入れられた表現だとしたら、悪質というか狡猾というか、タチの悪い手段のように感じます。……まぁ、多分にPBM的発想なので、大脱線なほどの考えすぎかと思いますけどね(笑)


 なお「オタク」という呼称については、今回のTBSの件ではそれが差別的呼称であるか否かを追求すべきではないでしょう。某巨大掲示板の書き込みを見る限り、恐らくは無駄に事態を混乱させるのがオチだと思われます。せいぜい「『オタク』という呼称は『マイナス印象』を今は持っている」という事実のみを認識しておけば、この場では十分かと思います。


 また、今回の件をかんがみて、個人的ではありますがTBSの番組の積極的視聴を当分の間やめることにします。

*1:家族と昼食を摂る際にそばのTVで件の番組が放送されてはいました。しかし、以前から同番組の内容が見るに耐えないものに成り果てており、家族につきあって見るのもつらかったので、自分だけ早々に食事を切り上げました

*2:意図したものであるか否かは問わず、「『オタク』は他の人にとって理解不能で不気味な人間であるという印象への誘導」が起きている

*3:雑誌でもある商品の紹介を行なったり、インタビュー等の協力を受けた場合、時間がなくとも相手のチェックは必須です